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1次元ファンデルワールス結晶Ta4SiTe4における熱電効果

岡本佳比古・山川洋一・竹中康司, 固体物理 59, 95-105 (2024).
Published 2024年2月15日

本記事では,低い電気抵抗率を保ちながら非常に大きいゼーベック係数を示すことで,特に室温以下の低温領域において高い性能を示したTa4SiTe4(とNb4SiTe4)の熱電変換特性を紹介し,その物理的な背景を議論する.Ta4SiTe4は一次元ファンデルワールス結晶と呼べる一次元性の強い特徴的な結晶構造をもつ.電子構造も特徴的であり,フェルミエネルギー付近にはディラック電子的なエネルギー分散の交差点だけが存在し,そこでは強いスピン軌道結合の効果によりとても小さいエネルギーギャップが開いている.これらの特徴は,Bi2Te3やPbTeといった従来材料には備わっておらず,Ta4SiTe4における高い熱電変換性能の実現にとって重要な役割を担っているはずである.そのため,Ta4SiTe4からわかることは低温用の新材料開発のための新しい処方箋となりうるのではないかと期待している.