2009年11月13日(金) 10時30分
グラフェンとは単層のグラファイト薄膜であり、炭素原子から生成が可能・素材そのものの強固さ・既存の半導体を上回る高移動度のキャリアなどの点から次世代のデバイスの素材として大きな期待を集めている。以前から特にナノスケールのグラフェンにおいて電子状態の形状依存、特にその端構造が系のフェルミ準位近傍で多大な影響を与える事が報告されており[1] [2]、多くの研究者の注目を集めてきた。またその可能性の一端として磁性付与、いわゆる端磁性が示唆されている。それらに対して以前我々は系中の空孔の効果が端による効果と同等である事を示し、また空孔による磁性付加の可能性も同様にありうることも示した。また最近、端によって付加される磁性を利用した帯状のグラフェン・グラフェンナノリボン上でのスピン偏極電流が提案されている[3]。我々はグラフェンナノリボン上での電流特性を再考し、また端磁性に空孔によって付加される磁性を組み合わせる事で、グラフェンナノリボンにおけるスピン偏極電流の更なる可能性を導いた。今回は、グラフェンに端または空孔によって付加される磁性の性質について説明し、その上で様々な端構造・空孔分布を考慮しつつ、グラフェンナノリボンのスピン偏極電流特性について述べる。単純に端磁性の存在はスピン偏極電流と強く関係しているが、それのみならず端構造そのものによっても電流特性は大きく変化しうることが分かった。
[1] M. Fujita et al., J. Phys. Soc. Jpn. 65 (1996) 1920.
[2] Y. Kobayashi et al., Phys. Rev. B 73 (2006) 125415.
[3] M. Wimmer et al., Phys. Rev. Lett. 100 (2008) 177207.
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