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有機導体におけるディラック粒子とベリー位相

鈴村順三 氏
Yoshikazu Suzumura
名古屋大学 大学院理学研究科

2011年5月23日 13時30分 理学館614

低次元有機導体では、電子の分子間飛び移りエネルギーの異方性により生じる新奇な電子状態が出現する。その典型として、2次元有機導体α-(BEDT-TTF)2I3 塩の加圧下で発見されたゼロギャップ状態を示す質量ゼロのディラック粒子がある。従来のグラフェンの場合と異なり、エネルギー分散を示すコーンの軸が傾斜し異方的であることに加えてコンタクトポイントの波数がブリュアンゾーンの対称点でなく偶然の位置に存在する。エネルギーバンドのみでは十分に明確にできないので、量子力学の波動関数の性質に起因するベリー位相に着目し、各波数でのベリー曲率を計算した。加圧下では、このディラック粒子は対として特有の振舞いを示す。ソーンを移動しながら安定に存在したり、臨界圧を超えると消滅したりするが、消滅の圧力付近でベリー位相が特徴的な振舞いを示す。ベリー位相は、質量をもつディラック粒子の検証にも有効である。このような粒子の存在が示唆されている他の有機導体も紹介し、有機導体におけるディラック粒子の諸性質を議論する。