2013年3月12日 11時00分 理学館614
電子系と格子系がカップルした系に対する低エネルギー有効模型の導出を行う。電子系の低エネルギー有効模型は最局在ワニエ関数[1]と制限乱雑位相近似法[2]を組み合わせることによって第一原理的に導出されるが、電子格子相互作用やフォノンの周波数に対する有効パラメータの第一原理的導出法は確立されていない。電子電子相互作用と電子格子相互作用がともに重要であるような超伝導体のメカニズムを解明するためには、電子電子相互作用・電子格子相互作用の両方の有効模型のパラメータを非経験的に導出し、それらを同等に取り扱える手法で解析することが必須である。 [1] N.Marzari and D.Vanderbilt, Phys. Rev. B 56, 12847 (1997).
本研究では電子系と格子系がカップルした系の電子格子相互作用とフォノンの周波数の有効パラメータを評価する手法を提案する。原子核イオンの変位がもたらすポテンシャルの変化は電子による遮蔽を受け、電子はその遮蔽されたポテンシャル変化を感じて散乱される[3]。この遮蔽のうち低エネルギーの電子自由度からくる遮蔽の効果は有効模型解析の際に取りこまれるので、有効模型導出の際にはその効果を取り除いておく必要がある。電子格子相互作用の有効結合定数は、低エネルギー自由度の遮蔽の効果以外で部分的に遮蔽された原子核イオンのポテンシャル変化による電子散乱の行列要素として計算される。フォノンの一体項の周波数に関しても低エネルギー電子自由度の分極によるフォノンの自己エネルギーの効果を取り除いて評価する。
本セミナーではこの手法を鉄系超伝導体であるLaFeAsOに適用した結果を紹介する。得られたパラメータを基に乱雑位相近似を用いてペアリング対称性を解析した結果も併せて報告する。
[2] F. Aryasetiawan et al., Phys. Rev. B 70, 195104 (2004); I. V. Solovyev and M. Imada, ibid. 71, 045103 (2005).
[3] S. Baroni et al., Rev. Mod. Phys. 73, 515 (2001).