2014年5月1日(木) 13時30分 理学館614
磁気工学分野の重要課題の一つにスピン動力学の微視的理解があり、特に磁気記録デバイスの開発においてはスピン緩和現象の機構解明とその制御が強く望まれている。一般に、バルク磁性体のスピン緩和はスピン軌道相互作用や磁性不純物に起因すると考えられており、多くの理論研究ではスピンの一斉回転を仮定した計算が行われている。しかし、実際のデバイスで用いられる多層膜構造のような磁気的不均一系では、各スピンが不均一に運動していると考えられる。強磁性金属においては、電子の伝導性がスピン同士の相互作用に強く関係しているため、このような不均一ダイナミクはスピン緩和に強い影響を与えると考えられる[1]。本講演では、s-d型モデルにおいて空間依存のスピン緩和が生じる機構をスピン波の緩和という観点から議論する。これまであまり着目されなかった、スピン波緩和の波数依存性に焦点を当て、不純物散乱やスピン軌道相互作用との関係について計算結果を報告する。 [1]N. Umetsu, D. Miura, and A. Sakuma, J. Phys. Soc. Jpn. 81, 114716 (2012).