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トポロジカル超伝導体における表面臨界現象

山影相 氏
Ai Yamakage
名古屋大学大学院 工学研究科

2014年7月10日(木) 13時30分 理学館614

 異方的超伝導体はその表面に零エネルギーのアンドレ-エフ束縛状態をもつことが古くから知られていたが,近年,これがトポロジーの観点からも理解されるようになり,また,トポロジカル絶縁体との類似からトポロジカル超伝導体とも呼ばれるようにもなった.さらに,表面の零エネルギー状態はマヨラナ粒子として記述され,非可換統計に従うことが知られている.この性質を利用することで安定な量子演算が可能になると提案され,量子コンピューターの舞台としてのトポロジカル超伝導体の探索とその表面状態の制御が精力的に研究されている.

 一方,トポロジカル超伝導体は相転移の観点からも興味深い.トポロジカル超伝導体から従来型の超伝導体への転移はトポロジカル不変量が変わるという量子相転移であり,従来の対称性の破れを伴う転移とは異なった振る舞い,臨界性が期待される.我々は特に系の表面に着目し,トポロジカルな,あるいはそうではない相転移の性質を調べてきた.その結果,系の表面においてはトポロジカル量子相転移に2つの種類があることを見出した[1].また,ドープされたトポロジカル絶縁体におけるトポロジカル超伝導状態においては,トポロジカル不変量は変化しないものの,その表面状態のエネルギー分散の形状が変化する,すなわちリフシッツ転移が起こることを明らかにした[2].これらの転移およびその違いは表面において現れるものであり,表面敏感な物理量,例えばNS接合のコンダクタンスに顕著に反映される.

 後者の系は多くの実験が行われている.講演では,トンネル分光[2,3]と熱力学量[4]の計算と実験との比較から,実現している超伝導の対称性についても議論したい.

[1] AY, Y. Tanaka, and N. Nagaosa, Phys.Rev. Lett. 108, 087003 (2012).

[2] AY, K. Yada, M. Sato, and Y. Tanaka,Phys. Rev. B 85, 180509(R) (2012); Physica C 494, 20 (2013); AY, M. Sato, K.Yada, S. Kashiwaya, and Y. Tanaka, Phys. Rev. B 87, 100510(R) (2013).

[3] T. Mizushima, AY, M. Sato, and Y.Tanaka, arXiv:1311.2768; S.Takami, K. Yada, AY, M. Sato, and Y.Tanaka, J. Phys. Soc. Jpn. 83 064705 (2014).

[4] T. Hashimoto, K. Yada, AY, M. Sato,and Y. Tanaka, J. Phys. Soc. Jpn. 82 044704 (2013); arXiv:1405.6801.