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Rashbaスピン軌道トルクの微視的計算

藤本純治 氏
Junji Fujimoto
大阪大学大学院 基礎工学研究科

2015年1月20日(火) 10時30分 理学館614

 強磁性金属と常磁性重金属の界面などでは空間反転対称性の破れによりRashba型スピン軌道相互作用の存在が期待され,それに起因した電流誘起スピントルク (スピン軌道トルク) に興味が持たれている.これまで,p2/2mのエネルギー分散を持つ2次元電子系におけるスピン軌道トルクが主に現象論的モデルに基づいて議論されてきた [1–3].微視的理論に基づく議論 [4, 5] においてもバーテクス補正の効果までは考慮されていない.p2/2m の2次元電子系において,スピンHall効果 [6] や異常Hall効果 [7] などでバーテクス補正は劇的な役割を果たすことが知られているため,スピン軌道トルクに対しても関心が寄せられている.

 そこで我々は,2次元Rashba強磁性体におけるスピン軌道トルクを線形応答理論に基づき,Green関数法を用いて,非磁性不純物ポテンシャル散乱に関して自己無撞着Born近似の範囲で計算した.バーテクス補正も取り入れた結果,p2/2mの2次元電子系では,Fermi面が2枚ある場合はreactiveなスピン軌道トルクが電子の減衰率の最低次では消え,またdissipativeなトルクについては角度依存が消失した.本講演では,スピン軌道トルクの化学ポテンシャル依存性,磁化の方向依存性,さらにスピン軌道相互作用の大きさ依存性を発表する.また,−2t(cos kxa + cos kya) のエネルギー分散に対するスピン軌道トルクについても議論し,実験との比較も行う予定である.

[1] A. Manchon and S. Zhang, Phys. Rev. B 79, 1 (2009).

[2] C. O. Pauyac, X.Wang, M. Chshievand, A. Manchon, Appl. Phys. Lett. 102, 252403(2013).

[3] X. Wang, C.O. Pauyac, and A. Manchon, Phys. Rev. B 89, 054405 (2014).

[4] H. Kurebayashi, et al., Nat. Nanotechnol. 9, 211 (2014).

[5] K.-S. Lee, et al., arXiv: 1409.5600.

[6] J. Inoue, G. Bauer, and L. Molenkamp, Phys. Rev. B 70, 041303 (2004).

[7] T. Nunner, et al., Phys. Rev. B 76, 235312 (2007).