2024年1月12日(金)10:30~ 理学館614
周期的結晶中の電子はブロッホ電子と呼ばれ、その性質はエネルギーとブロッホ波動関数により特徴付けられる。エネルギーの波数依存性が輸送応答のドルーデ理論や銅酸化物超伝導体のスピン揺らぎ機構を決定するように、ブロッホ波動関数も量子ホール効果など様々な現象に現れる。そのような現象ではブロッホ波動関数の波数依存性が重要な役割を果たし、量子幾何学として近年盛んに研究されている。
量子幾何学は正常相の性質ではあるが、その性質は超伝導相にも引き継がれる。特にフラットバンド系の超流動密度では、従来のフェルミ液体論からの寄与が消え、量子幾何学が超流動密度を決める[1]。捻り2相グラフェンのフラットバンド超伝導発見以来、フラットバンド超伝導の量子幾何学は多くの研究者の注目を集めている[2]。しかしながら、超伝導における量子幾何学の研究はフラットバンド系の超流動密度に限られており、より一般の超伝導体と量子幾何学との関係に関する研究は最近まで行われてこなかった。 本公演では、フラットバンドを持たない物質における量子幾何学に関する最近の4つの研究、(1)単層FeSeにおける超流動密度への量子幾何効果[3]、(2)FFLO超伝導に対する量子幾何効果[4]、(3)量子幾何誘起アナポール超伝導[5]、(4)量子幾何効果によるスピン三重項超伝導[6]を紹介する。
[1] S. Peotta and P. Törmä, Nat. Commun. 6, 8944 (2015).
[2] P. Törmä, et. al., Nat. Rev. Phys. 4, 528 (2022).
[3] TK, et. al., Phys. Rev. Research 4, 023232 (2022).
[4] TK, et. al., Phys. Rev. B 106, 184507 (2022).
[5] TK, et. al., Phys. Rev. B 107, 214513 (2023).
[6] TK, et. al., Phys. Rev. Lett. accepted.