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金属電子系における新規な自発的対称性の破れ

田財里奈, 大成誠一郎, 紺谷浩, 日本物理学会学会誌 77, 145 (2022).

電子相関に由来する多彩な自発的対称性の破れは、金属電子論における長年の中心的課題である。最近そのバラエティーが急速に拡大し、量子液晶として包括的に研究されている。具体的には、回転対称性が自発的に破れた「ネマティック秩序」や、加えて並進対称性まで破れた「スメクティック秩序」が、鉄系超伝導体やIr酸化物、重い電子系において相次いで発見され、この分野の発展の大きな契機となった。更に最近では、銅酸化物やIr酸化物、フラストレートV化合物において、ナノスケールのループ状の電流秩序が相次いで報告され、量子相転移の研究は活況を帯びている。 著者らは、(i)密度波方程式に基づいて電子・正孔対凝縮を解析する方法と、(ii) 汎関数くりこみ群に基づいた変分法理論を開発し、鉄系および銅酸化物で観測される偶パリティの軌道・ボンド秩序、フラストレート系における奇パリティの電流・スピン流秩序が、量子干渉効果によって生じることを明らかにした。さらに2019年に新しく発見された、カゴメ格子超伝導体AV3Sb5 (A=Cs, Rb, K)におけるDavid Star電荷秩序の正体が、干渉機構によるボンド秩序であることを提唱した。

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